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2009年09月24日

『サウダーヂ』
富田克也(監督・脚本)・相澤虎之助(脚本)新作撮入インタビュー

 小誌「映画芸術」の2007年ベストテン&ワーストテンにおいて、自主映画にもかかわらず堂々9位に入った『国道20号線』。この作品は、変貌著しい国道沿いの風景のなかで、元不良のカップルが社会のシステムに絡め取られ、しだいに抜き差しならない状況へと追い詰められていく様を描いて、一部の映画人や評論家だけでなく社会学者の宮台真司さんなどからも絶賛を受けました。
 今回は、新作『サウダーヂ』の制作に向けて再始動した監督の富田克也さんと共同脚本の相澤虎之助さんを編集部にお招きして、新作の内容と制作体制についてお話を伺いました。『サウダーヂ』では前作よりも作品規模が大きくなり、製作費としてのカンパを広く募っています。個人は一口3,000円からということなので、『国道20号線』に感銘を受けた方、このインタビューを読んで共感を覚えた方、カンパという形で彼らの映画に参加してみてはいかがでしょうか。
(取材・構成:平澤竹識 構成協力:笠松勇介)

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左から富田克也、相澤虎之助

取材で直面した予期せぬ現実
――まずは先日、「『サウダーヂ』の長い予告篇」と題してアップリンクで上映されたドキュメンタリー映像『FURUSATO2009』の話からお伺いしたいんですが、あの映像はもともと取材用に撮り始めたものなんですよね。

富田 そうです、前作の『国道20号線』は自分たちの経験を踏まえて、ある程度は頭の中で作れた作品だったんです。『国道〜』は甲府のロードサイドを舞台にした話だったけど、次は中心街を舞台に撮ろうということになった。それで今、中心街は一体どうなってるんだと思ったときに、今回は頭の中だけでは作れない、それだけでは捉えきれないと思って、実際にリサーチすることにしたんです。そこで生きている人たちが一体どんな人間で、何をやっていて、今どういう状況にいるかってことを、なるべく先入観を捨てて見ようと思ってカメラを持って街を歩き始めたという感じでした。高校を卒業してからはずっと地元を離れてたから、時折帰っていたとはいえ、その間は空白なんですよ。だから、本当に俺は甲府のことをわかっているのかなと思って、それで調べることにしたんです。

相澤 『サウダーヂ』では在日外国人の問題を取り上げてるんですけど、『国道〜』の撮影でも、たまたまブラジル人のディスコに行ったりはしてたんです。でも、当時はその問題をあんまり意識してなくて、撮った後は忘れてるような感じだったよね。

富田 そうそう。外国人が集まるディスコがあるって聞いて行ってみたら、「ブラジリアンバー・サクセソス」っていう名前で、入ってみたら日系ブラジル人がいっぱいいて、これは面白い、ここで撮ろうってことになった。でも、その時は撮影場所として面白いというぐらいの意識だったんです。ただ、その頃から甲府にはブラジル人が大勢いるという話は聞いてました。例えば、工場の前に作業服を着たブラジル人が列を作って出勤していく風景があるとか。でも『国道〜』を撮り終えた後、そのことはすっかり忘れてたんで、リサーチを始めた時はまっさらな状態でしたね。

――そのリサーチを通して改めて在日外国人の問題に突き当たったと。

富田 甲府のロードサイドには大型商業店舗等々があって、人の流れがそこにあるわけです。しかし、人々は新しい物が好きだから、新しい場所を作る。同じような施設を作るわけですね、同じ道路上に。すると今度は新しいショッピングセンターに人が流れて、前の店舗群には空きがポツポツでき始めたり。もうそうなると見る見るうちに、みすぼらしくなるわけです。そういう中である時、地元の女の子から、そこが「スラム化」してるという話を聞いて。悪そうな若い外国人が溜まってて、怖くて近寄れないと。なんだそりゃと思って実際に行ってみたら、確かにいろんな国の子供達がいる。ゲームセンターという場所の雰囲気も手伝って、悪そうな子供達が溜まっている、しかも外国人、となれば、まあ確かに、女の子ならそう思うのも仕方ないかという感じでした。で、一人に話しかけてみたんだけど、彼は二十歳の日系ブラジル人で日本語もペラペラ。しかも俺と同じ中学の後輩だったんです。かつて俺らが中学に行っていた時代には同じ学校に外国人がいるなんて状況は考えられなかったわけですよ。で、彼が甲府の近くの田富町に住んでるって言うから、そこに入り込んでみたら、急にブラジル人との遭遇率があがる。ブラジル人の一大コミュニティがあったんです。

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相澤 群馬の大泉なんかはブラジル人街として有名ですけど、自分らの地元のすぐ傍にそういうところがあるって知ったら「うおー」って驚いてね。

――初めから在日ブラジル人の問題を描こうという意識ではなかったんですね。

富田 最初は『国道〜』にも出ている鷹野毅が土方をしてるんで、地方の土木建築関係の壊滅的な状況を知ろうと思って、彼の職場から入り込んでいこうとしてました。それで、現場の作業風景を撮らせてもらったりしてるうちに、ブラジル人にたどり着いた。で、その時に彼らが大量にクビを切られて正月を越せるかわからない、中には車上生活してる人もいるという話を聞いたんです。そうなったのは、北京オリンピックが終わってからなんですよ。北京オリンピックの時は鉄鋼関係の景気がよかったんだけど、オリンピックが終わると同時にガーンと落ちた。それでブラジル人が一斉に解雇されたわけです。そのことを僕らが知った頃には全盛期の三分の一のブラジル人は祖国に帰ったという状況だったけど、地球の裏側のブラジルまで帰るためには相当なお金が必要で、帰りたくても帰れない人たちが大勢いる。今日本に残っている人たちは失業保険を更新しながらギリギリの生活をしてるんです。

相澤 今回は甲府の街を撮ろうとしていて、街をうろついてたらブラジル人たちのそういう話が出てきたから、これはもう撮らないとダメだろうということになったんですね。映画全体としては、ブラジル人だけを描くわけじゃないですけど。

富田 もはや甲府を撮るに当たって、彼らの存在を無視して成立しないだろうと思ったわけです。で、ブラジル人たちにリサーチして、どういうふうに日本に来たのか、そのきっかけを聞いてみたら、90年代の初頭にサンパウロを歩いていたら、端から声をかけられたと。要は、日本の企業の人間が声をかけるわけですよ。「おまえ今給料いくらもらってる?」って。で、いくらですって答えると「じゃあ、その10倍やるから日本で働かないか」と言われる。日本に来たら住むところも保証するし、職場までの送迎もするし……みたいな至れり尽くせりのことを言って、ドバっと連れ込んだという歴史があったんですね。そういうことを取材の中で初めて知ったわけです。日本が好景気の労働力欲しさに、入管法まで改正して日系3世まで入れるようにした。それで人さらいみたいに連れてきておいて、現実の彼らの生活に関する法整備は全く追いついていない、それは今でもですよ? 例えば、税金のことや福祉のことなんかですけどね。で、いらなくなったら勝手に帰れと。来たのはお前らだ、自己責任だろうという態度ですよね、基本的には。

相澤 彼らも当時はまだ10代とかなんです。俺らも10代で給料が今の10倍になると言われたら、それは行くじゃないですか。日本に行って5年、10年働いたら大金持ちになれるわけだから。

――外国人が日本に長期滞在するためにはいろんな申請をしなくちゃいけないけど、日系人だとそれが簡単にいく、それが会社としても使いやすいから、ブラジルで日系人を大量にスカウトしたということですね。

富田 要は、安い労働力を海外から引っ張ってきたという話ですよ。

相澤 企業が国の制度まで見越したうえで計画的に入れたと。で、「自己責任」です。

富田 相当きつい仕事をさせられたみたいで、16時間労働とか当たり前みたいな状況だったらしいですよ。

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『国道20号線』のその先へ
――これは製作発表の時の話と被るかもしれませんが、ドキュメンタリーとして『FURUSATO2009』で撮影した現実を超えるものを『サウダーヂ』ではフィクションとして語りなおすことになるわけですよね。架空の物語として現実を再構築する意味はどこにあると考えてますか。

富田 例えば、今回リサーチする中でこんな出来事があったんですよ。映画に出演してもらう予定の日系ブラジル人の男の子が駐車場を借りに行ったら、そこで大家さんがいきなり「この前うちの駐車場で車上荒らしがあった」という話を始めたと。どうやら、その犯人が外国人だったらしいんだけど、おばさんにしたらペルー人だろうがブラジル人だろうが区別がない。でも彼にしたらそれは濡れ衣なわけで、身振り手振りで誤解を解こうとしたんです。今まで日本で差別や偏見に晒されてきた過去があるから、彼も話しているうちに熱をおびてくるわけですよ。そうすると、おばさんは「怖い」となってしまう。それで「二度と彼には会いたくない」って話になった。結局、その時は僕らが間に入ってその誤解を解いて、大家さんも一応は謝罪してくれたんですけど、これってどういうことかと考えてみると、その大家さんも今まで自分の家の近くにブラジル人たちが住んでいることすら知らなかったんですよ。要するに、接触すらしていない。今回はたまたま接触が起きたから、そうやって問題が表面化したけど、問題は接触が起きなければ解決もされないってことなんです。駐車場の件は、たまたま日本人とブラジル人の間に接点ができて衝突が起きたことで初めて誤解が解けた。でも、それがなければ「最近外国人がウロウロしている、なんか怖い」ってことで終わってしまうんです。だから、現実をフィクションで語りなおすのは、フィクションの中であえて衝突を作るというのが目的ですね。ドキュメンタリーだとそういうことが起きないですから。

相澤 現実に衝突が起きているとしても、それはドキュメンタリーに撮れるものじゃないですね。細々したことは起きているんだろうけど、日本は諸外国に比べて、そういう問題はまだまだ遅れていますから。

富田 だから、フィクションの中で衝突させることによって問題を表面化させる。それは実際ありえないことではなくて、小さいことは必ずあるはずなんですよ。みんなそれを見ようとしないから表面化しないだけで、ちょっとしたきっかけで大事件が起こる可能性もある。それを想定してドラマに組み込んでいくということですね。街に入り込んでいろんな人に話を聞くと、彼らの味方をしている日本人もかなりいて、「もう暴発寸前だ」「そのうち暴動が起きるよ」なんて話す人すらいました。デモは既に起きています。

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――これは製作形態や興行のことも含めて伺いたいんですが、『サウダーヂ』に取りかかるに当たって、『国道〜』の経験を活かした新しい試みというのはありますか。今回は自主映画と言ってもプロデューサーが付いていたり、製作委員会も組織してますよね。どういう意図があったんでしょう。

富田 僕らの考えだけってことではなくて、やっぱり『国道〜』に賛同してくれる人たちが現われてきたのが大きいですね。僕たちがお願いしてと言うよりは、彼らのほうが名乗りを上げてきてくれた。今回は東京側のプロデューサーが一人、山梨側のプロデューサーが二人いるんだけど、みんな普段は別の仕事をしてる人たちなんです。ただ、今までは自分たちがやってきたような作業をその人たちがやってくれるんで、すごく楽になった部分もあります。加えて、自分たちではイメージできないような動きもしてくれるわけですよ。この映画はブラジルが関係してるから、ブラジル大使館の後援を取りつけようとか、後援を取りつけた後でブラジル銀行に融資の相談をしてみようとか。

――後援を取りつけることでどういうメリットがあるんですか。

相澤 一番わかりやすくいうと、撮影の時に話が通しやすくなったり、ロケがしやすくなったりする……のかな……。うちらはどっかの馬の骨なんで信用とか全然ないわけでしょ(笑)。ただ、『国道〜』が少しずつではあるけど、認知され始めていて、観てはいないけど、ああ、あれね、という広がり方をしていて、それをさらに広めるためにプロデューサーがいい動きをしてくれている、というわけです。後援とかはほんの一部です。なんといっても「地の利」ということです。例えば、閉まってる商店街のシャッターを自分たちだって開けたいって言うんですよ、なにかの企画とかお祭りで一時的にやるんじゃなくて。真剣にそういうことを考えている人たちもいるんです。うちらもそういう意識で映画を作ってるし、そういう意識で映画に関わってくれたら嬉しいですね。

富田 でも、本当に商店街の人たちがそう思ってくれるかどうかは、今後の俺たちの動きにかかってると思う。こっちの一方的な思いだけではどうにもならないですから。どう街の人たちを巻き込んでいけるかはこれからの課題ですね。

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――最後に、この映画ではカンパを募って製作費に当てるということをやっているわけですが、読者の方に向けてメッセージはありますか。

富田 僕らが望むのは、どんな形でもいいから映画に関わってくださいってことなんです。お金を出すという形でも、エキストラとして参加するという形でも、関わってみれば映画を観る気持ちも湧いてくるだろうし、それが一つの目的でもあります。とにかく、面白がってもらいたい。個人個人の思いをこの映画に託してもらえればいいんです。ただ、あまり嘘みたいなことを言ってお金を集めるのも嫌なんで正直に言いますけど、この映画はハッピーエンドでもないし、登場人物は酷い人間ばかりかもしれないし、地元の良さをアピールするような「ご当地映画」でもない。でも、この映画をきっかけに地方の現状に対する問題意識を持ってもらって、自分たちの立ってる場所の厳しい状況を認識してもらったうえで、次のステップに行ってもらえたらいいなと思います。

相澤 人間の生活をクソ真面目に描くという感じではないですね。みんな普通に生きてますから。辛いことがあってもそんなに暗くなってるわけではないし、ささやかに慎ましく暮らしているというわけでもないでしょう。

――みんな苦しい状況でもセックスしたりギャンブルしたりしてますからね。

富沢 「ささやか」とか嫌なんですよ、嘘っぽくて。だから、一切同情できる人物は出てこないと思います。そういう意識で書きましたから。

――カンパは個人なら一口三千円ということですが、特典とかはあるんですか。

相澤 こんなの特典なのか疑問ですけど、映画にクレジットさせてもらうとか……。あと、完成披露試写にはご招待させていただきます。

――完成はいつ頃になりそうですか。

富田 完成予定は……来年の夏ぐらいか、できればもっと早く完成させたいとは思うんですけど、例によって土日、盆暮れ正月を使っての撮影なので、どこまでいけるのかなという感じですね。でも、がんばります。

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『サウダーヂ』公式サイト http://www.saudade-movie.com/index.html

※カンパの詳細は下記の通りです(『サウダーヂ』公式サイトより転載)
この度、私たちは劇場公開映画『サウダーヂ』の製作を開始することとなりました。『サウダーヂ』は山梨県甲府市でオールロケを敢行いたします。地元の皆さまはもとより、多くの皆さま方のご協力なしでは、この映画は到底実現できるものではありません。2010年の公開を目指します本作の製作費に関しても、広く皆さまからのご寄付をお願いしたいと考えております。何卒よろしくお願い申し上げます。ご支援、ご協力頂けます方は、下記の銀行口座、郵便局にお振込み頂けましたら幸いです。

個人1口 : 3,000円から
企業・団体: 30,000円から

山梨中央銀行 本店営業部
普通 1962091
口座名義 サウダーヂ製作委員会
*お名前・ご連絡先を、下記のアドレスまでお知らせ下さいますようお願い致します。

mail★kuzoku.com
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郵便振替
口座番号 00230−6−53088
加入者名 サウダーヂ製作委員会
(カナ)サウダーヂセイサクイインカイ
*郵便振込の場合、なるべくe-mailアドレスもご記入ください。

ご寄付頂けた方は、お名前をクレジットタイトルへ記載させて頂きます。
また、先行試写その他イベントへご招待させて頂きます。

サウダーヂ製作委員会
会長:富田智美(元YBSアナウンサー)
〒400−0067 山梨県甲府市長松寺町11−3
電話 : 050−3497−2986
Email: mail★kuzoku.com
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posted by 映芸編集部 at 23:13 | インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする