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2012年02月06日

映芸シネマテークvol.11レポート
『ギ・あいうえおス-ずばぬけたかえうた-』

 ダニエル・シュミット『KAZUO OHNO』(95)、園子温『うつしみ』(99)など、国内外で高い評価を呼ぶ作品を輩出してきた、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品。映芸シネマテークvol.11では平成21年度作品、『ギ・あいうえおス-ずばぬけたかえうた-』を上映した。監督は『おそいひと』(04)『堀川中立売』(10)で話題を呼んだ柴田剛。「映画制作クルーが映画を制作してゆく過程を、音楽を演奏するバンドと同等のものとして描く」というコンセプトのもと、映画製作をおこなう柴田剛率いるバンド「ギ・あいうえおス」がロケ車「くじら号」に乗って旅をし、行く先々で風景を前に佇み、音を録り、ときに人々と言葉を交し、その様子をカメラは追い続ける。ほとんど姿を見せないカメラマンも気になるが、特に印象に残るのは彼らがマイクを手に音を録る姿である。ほとんど加工されてないままの音が、時に画と微妙にズレながら聞こえてくる不思議さが、見ているうちにクセになってくる。
 本作を上映後、ゲストに柴田剛監督とバンド「HOSE」のメンバーである宇波拓さんをお招きした。『一万年、後....。』(07 沖島勲)や『スリップ』(09 鎮西尚一)、『結び目』(10 小沼雄一)など映画音楽も手がけている宇波拓さんは、本作の音についてどのように語られているのか。この映画のコンセプトにはじまり、音が醸し出す奇妙さ、互いの音楽遍歴や映画体験まで語っていただいた。
(構成:中山洋孝)

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左より柴田剛・宇波拓(敬称略)

宇波 監督と僕は今日の上映前に初めてお会いしたんですね。『堀川中立売』はポレポレ東中野で拝見してましたし、柴田監督のことは気にしてたんですけど、結構人見知りなんで、ちょっといま、緊張してますね。

柴田 そうですね。僕も酒飲まないと、全然。

宇波 その話は聞いてたんですよ。一応僕もリサーチしようと、いろんな人に「柴田さんってどんな人ですか」って聞いたら「いやあ、クセモノですよ」って。

柴田 クセモノ(笑)。

宇波 「飲まないとシャイですよ」とか、いろいろ聞いてたんですけど。今日はよろしくお願いします。
 ずっと前にDVDいただいてたんですけど怖くて見れなくて。今日の午後にようやく見て、ここでもう一度見て、非常に面白かったですけど、見終わったいま、掌にメモしてるんですね……、「西遊記」って。

柴田 本当だ(笑)。

宇波 まず、この映画はすごくバンドっぽいんですよね。バンド映画ってあるじゃないですか、バンドを追うみたいな。でもこれは映画自体がバンドで、具体的に言うとロックバンド、ノイズバンドですよね。

柴田 そうですね、ノイズバンド。

宇波 映画自体がノイズバンドになってるのは、ちょっとやられたなって感じはありますね。

柴田 宇波さんはHOSEってバンドで『一万年、後....。』の音楽というか、音効やられましたよね。阿藤快さんに効果音をつけたりとか。メンバーは何人いらっしゃるんですか。

宇波 HOSEは『一万年、後....。』あんま関係ないですよ。

柴田 あ、宇波さん中心でしたか。

宇波 でもHOSEもメンバー5人なんですよ。この映画も基本映ってるのは5人ですよね。

柴田 そうですね。

宇波 5人ってなんか良いんですよね。なんですかね?

柴田 なんだろうなあ。

宇波 バンドで5人組ってなんか良いんですよ。特にバンド映画だと、バンド間の人間関係とかのバランスみたいなのって大事じゃないですか。最近もバンド青春モノって『NANA』(05 大谷健太郎)とか『少年メリケンサック』(09 宮藤官九郎)とかいっぱいありますけど、ああいうのがすごい僕、苦手で。

柴田 苦手(笑)。メンバーも4人ですもんね。

宇波 撮ってる人がバンドやったことない感じがする。

柴田 わかるわかる。それホントに、声を大にして言わないといけない。「けいおん!」とか演奏よりも仲間内の話ですよね。なんか違和感感じて。でも僕も実は前に青春バンドコメディみたいなのを監督したことがあるんですけど、メンバー4人だったんですけどね。僕自身、昔バンドやってきて良い思い出とかないし、そんな良い青春も送ってないし……。それよりも演奏というか、鳴った瞬間とか、練習が面白かったですね。

宇波 あとバンド映画に出てくる客ってムカつきません?

柴田 (笑)

宇波 「イエー!」みたいな。ライブハウスにこんな客、いないよ。

柴田 いねーよ(笑)。バンドやってなくてもわかると思いますけどね、バンド映画で描かれてる、それぞれのバンド像とか人間像ってなんか違う。

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宇波 これは壷を除いてほとんど楽器が出てこないのに、ノイズバンドのドキュメントを見たような印象が残りましたよ。監督が車の上でマイク持ってるじゃないですか。うわ、これはギターソロだなって。

柴田 そうです! さすが。

宇波 監督はバンド経験者なんですか?

柴田 ずっと高校のときはノイズを。

宇波 あ、ノイズバンドを。

柴田 大好きで。もう憧れで。

宇波 思い出した。まず敵を知ることから始めようと思ってウィキペディアで監督の名前を拝見したら「ボアダムスに憧れて大阪に移住」って書いてあったんですけど。

柴田 もうベタベタですよ。神奈川にいた頃はずっと東京のレコード屋さん通ってて、渋谷にあったパリペキンと、あと白楽にあるゴクラク。そこでインディーズのバンドのソノシート、カセットテープばかり買ってました。

宇波 僕ら同い年くらいですか?

柴田 僕75年。

宇波 僕76年なんですよ。

柴田 じゃあタメですね。

宇波 僕も高校の頃「大阪のノイズはすごい」って聞いてて。僕はちょっと遅れてるっていうか。

柴田 僕もサードアルバムの「POP TATARI」ぐらいからですよ。そういう音楽聞き始めたくらいだから「なんだこれ、音楽なのか?」って。そこから気になってレコード屋さんに「これはシミー・ディスクって言うんだ」とか教えてもらいながらいろいろ聞き始めましたね、ノイバウテンとかホワイトハウスとか。ちょうど先日DOMMUNEでもやってましたよね。ある時、車のCMで流れてた曲が気になって、後でわかったんですけどキング・クリムゾンの「ムーンチャイルド」。でも僕はあんまり音楽のことをよく知らなかったから、レコード屋のレジ行って、アカペラで歌って探したんですよ、恥ずかしながらも(笑)。そしたらノイバウテンコーナーに連れてかれて。

宇波 (笑)

柴田 これはなんかご縁があると思って、カセットテーパー始めたんですよ(笑)。カセットテープに音いっぱい詰めて、ギターはデスメタルの上手いやつに頼んで、ドラムはドラム缶を叩いて、多重録音して。

宇波 かっこいいじゃないですか。

柴田 でもディスクユニオンに持ってったら、断られて。

宇波 断られたんですか! 

柴田 ライブ経験のない人は原則的にテープ置けないんだそうです。

宇波 わかってないですね。

柴田 100本くらい気合入れてダビングしたんで、仕方ないから渋谷をさまよってたら、パリペキンを見つけたんですよ。そこでテープ置いてもらって。

宇波 ああ、そういうことだったんですか。

柴田 ずっとそうです。その頃は東京のバンドだとサーファーズ・オブ・ロマンチカが一番「うおー! いいなー!」って思ってて。

宇波 シンバルスタンドが人間っていう(笑)。良いバンドでしたよね。

柴田 東にはサーファーズ・オブ・ロマンチカがいる。西にはボアダムスがいる。僕は今後どっちに行きたいか。

宇波 東か西か。

柴田 もう東は一通り、とりあえず十代でわかった気になったんで、じゃあ西行こうって。そしたら非常階段とか、すごいでしょ。ノイズ自体がどうとかいう観念、概念ではあんま刺さってこなくて、ノイズバンドの、その「バンド」っていうのに、ものすごい憧れを持ってるんですね。

宇波 僕もそれはすごいよくわかって。関西だと非常階段もそうなんですけど、ボアダムスとか、やっぱバンド力が高いんですよ。演奏力っていうのとも違うんですけど、バンドのアンサンブルの作り方のスキルがめちゃめちゃ高いですね。実際一人一人会ってみると、ものすごい楽器上手かったりとか。僕はボアも好きだったんですけど、花電車がすごい好きで。あのメンバーとはちょっと交流もあるんですけど、なんかもう楽器上手すぎて、なんなんだっていう感じですよ。だから結構底力があるっていうか。

柴田 そうなんだ。ボアダムスはもう、下手の集りだと思ってて。

宇波 そういう扱いでしたよね。

柴田 こっちの想像だと、瞑想しながら、楽器奏でられる瞬間を待ちながらとか、スタジオ入って全員一まず寝ころがって録音しとくとか……。

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宇波 でもこの映画もそういうバンド力を感じるんですよ。なんなんですかね?

柴田 え!? うーん(笑)。

宇波 やっぱりメンバーで言うとディジュリドゥ吹いてた……。

柴田 いつもは僕の映画で美術をやっている(西村)立志っていう、髪の毛もじゃもじゃの髭の男。

宇波 彼がいることでバンドのアンサンブルが高まってる感じがするんですけど。

柴田 僕はバンドとかカセットテーパーとかやめてから、もうずっと映画を続けてるんですけど、映画のスタッフもバンド活動みたいな感覚で捉えてたんですよ。で、僕も今日久しぶりに見て思ったんですけど、「ギ・あいうえおス」は音を録音する旅に出た、映画を撮ってるバンドっていうことだけど、被写体がいないんですよね……、自分で言うのも何ですけど。

宇波 面白いですよね。この人たち、何のためにやってるんだろうっていう。

柴田 ない対象物を追っかけてるバンドじゃないですか。対象物が全くないから、監督の僕は常に路頭にまよっていて、スタッフをいつも翻弄している。そのときにメンバーであるカメラマンは誰を押さえてるか。そこで一番被写体足りうる救いの手が、髪の毛もじゃもじゃの髭。つまり彼が一番音楽的なんだなーって、見てて気づいたんです。

宇波 バンド映画ってのと同時に、最後はフェアリーテールなんですかね? バンドが幽霊じゃないですけど、記述者が実はいなかったみたいな。なにを追い求めるとかもなかったけど、主体自体もいなかったみたいな、そういう構造になっているんですか?

柴田 そうです。まず僕自身、主体性がないというより、どこか「心ここにあらず」みたいな状態が実際続いてて。なんかこう、向かうものがさっぱりないんですよね。それでなにをするかっていうと、いっそ透明になってしまったほうがいいっていう。ただ透明になるだけも癪だから、すごい大好きなノイズ聞いていたいなって。

宇波 大好きなノイズを聞いている透明人間ってすごいですね(笑)。

柴田 すごいでしょ。どういうもんだろうって。透明になったらむしろノイズ、音をちゃんと聞けるんじゃないかって思えたんですよ。でも、勇気いることでしたよね。この映画を作る段階に至って、常日頃の映画撮影メンバーにどうやって伝えて口説こうか、挑戦でした。特にカメラマンは嫌がって。

宇波 ちゃんと映画作ってる人からしたら、やっちゃいけないことですよね。

柴田 怒られるシリーズですよ、やること全部。ただ、どうでしたか? 音は良かったですか?

宇波 僕も映画の整音とかやったりするんですけど、外でマイクで録った最初の音ってこうですよね。映画にしちゃう時は綺麗に聞きやすくするんだけど、それがそのまま聞けるのがいい。現場のプリミティブな、素材の生々しさを突きつけられるみたいな。音は加工してないですよね。

柴田 全然加工してないです。編集って特に苦手なんでいつも編集マンつけるんですけど、このノイズバンドのドラム、リズム担当なんです。だから必要最低限の、映画的なっていうか、映画効果的なほんのちょっと加工したんですけど、それ以外はどんどんどんどん、映画の原始的なところに行こうと思って。トーキーとサイレントってくらいの段階にまでいって、カラーだと情報量が多過ぎるんで、なるべく白黒にして、撮ってきた風景の音のまま爆音で、フル音量でかけようと。

宇波 撮った映像に音をつけることで、映画に奥行きが出るって言うじゃないですか。足音つけるなり、風景の音つけるなり。それこそやってて「別にこのままでいいじゃん」って思うこと結構あって。(映像と音が)合ってるのが普通だとは思ってるけど、別にそうじゃなくてもいいじゃないのって。

柴田 宇波さん、言いますね(笑)。

宇波 いや、否定してるわけじゃなくて(笑)。『動くな、死ね、甦れ!』(89 ヴィターリー・カネフスキー)って群衆のシーンとか違う音が入ってたり、監督が笑っちゃってる声とかそのまま入ってて、なんだかいいんですよね。うまく言えないけど面白い。

柴田 受け手にとっては、もう既に画がでっかく映ってる時点で、どっか音は鳴ってるし。

宇波 それに音をつけても、画を増幅させてるだけで、そういうわかりやすさって別に、もちろんあっていいんですけど、なくてもいいかなって。

柴田 勇気いるところですよね。

宇波 でも映画って無音にしないことになってるじゃないですか。

柴田 なんですかね、これは。僕、写真と動画にさほど違いはないって思い続けてるんですよ。写真のこと、セルフポートレートだとか、大好きな人たちっているじゃないですか、いっぱい。そこで彼ら、彼女らが写真についての思いを、特にダイレクトに響いた「自分」ってものを投影してよく喋ってるけど、その会話の中にね、動画、映画をぜひとも仲間に入れて欲しいなっていつも思っているんだけど、伝わらないんですよ。「映画はね、ちょっと」とか言われたり。これがやっぱ悔しいですね。さっき宇波さんがおっしゃった通り、全編音なくてもいいシーンとかある映画だってあるんだし、この映画もそうだし、もっともっと、映画って本来はさ……って思うんですよね。

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宇波 この映画は実験的なことなんだけど、あまり実験映画って感じじゃない。映画の方法を実験してやろうって作品じゃなくて、その方法自体が映画のテーマにシンクロしてる感じが素晴らしいと思いますね。

柴田 一番最初に映画やりたいって思った頃、目の前にあるものだけで、手探りでやるじゃないですか。画と音を別々に録っちゃったけどどう合わせようとか。いまはもう機材も安く恵まれてるし、スタッフ達も何年選手でずっといるんだから、そこでもう一番初歩の、初期衝動、「これ好きだからやりたかった」みたいな、そこに戻って作りたかったんですね。

宇波 『堀川中立売』も全然違う方向ですけど「映画って楽しい!」みたいな感じがすごいしましたけどね。

柴田 そういうモチベーションでないとできない、でもそうでなくてもやんなきゃいけないって毎回思うんですよ。あるじゃないですか、内発的なものって常に。ちょっと脱線するけど、大竹伸朗さんがスゲーかっこいいこと言ってて。モチベーション、テンションが低い時、筆が乗らない時にどうしたらいいんですかって質問されて、大竹さんは「ふざけんじゃねえ」って。サラリーマンとかみんな好きでもない仕事を満員電車乗りながらやってるんだから、そんなただ紙にペンで画を描いたりすることなのに、テンションが乗らないとかふざけたこと言うな、テンションがないなりに描けるものはあるんだから描け、恵まれてるぞって。俺、本当それに感銘を受けたんですよ。俺の場合、映画を愛してるからいろんな嫌な制約があっても映画作りができてるうちが花だからやるってタイプじゃないんです。でもテンションが低い時、テンションが低いままやるぞって。
 そうやって作品残すと、今日映芸で御呼ばれして、宇波さんとトークショーになる。「まさに!」って思うんですよ。僕が映画、映画ってやってくと、結局音に行き着くんですよね。僕が映画好きになった理由は、音ですもん。ガキの頃テレビでやってた『デルタ・フォース』(86 メナハム・ゴーラン)をVHSもなくて繰り返し見ることできないから、その代わり妹と一緒にラジカセを近づけて、テーマ曲録音するんですよ。そうしたら繰り返し聞けるでしょ。それで『デルタ・フォース』をもう一回見た気になって追体験する。

宇波 HOSEのトランペットの江崎さんも、子どもの頃ガンダムが好きで、同じようにラジカセで毎回録音して何度も聞いて台詞のタイミングとか完璧に覚えたって。

柴田 すごい立体的な映画体験ですよ。受身の3D映画とはケタが違う。圧倒的にそのほうが情報量が高い。

宇波 僕ね、3Dとかサラウンドって間違ってると思うんですよ。『エクソシスト』(73 ウィリアム・フリードキン)のリマスター版みたいなのを随分前に見に行ったら、サラウンドが丁度出始めた頃だったんですね。映画って前にある画面を見てるじゃないですか。でも電話の音とかは後ろから鳴って。あれはすごい余計だと思ったんですけど。どうなんですか。

柴田 いろんな音の位相ですよね。自分が作るとなったら、鳴り方とかいろいろチャレンジしたいんですけど。でもお客さんとして見るときはどうなんだろうな。

宇波 映画見てるときは画面のなかでいろんな立体感があるんであって、後ろから鳴るのは反則かなって思うんですけど(笑)。でもやっぱり変な言い方ですけど、いいですよね、映画の音って。池に石を投げて落ちてから、ちょっと音が遅れて入ってきますよね。単純な付け方ですけど、ダブミックスっていうか、不思議な効果がありますよ。

柴田 「映画的でしょ」と僕は思ってて……フィルムだと音と映像がズレたりして、そこで時間の流れみたいなものが出ますよね。

宇波 時間が遅れてくるみたいな感じしますよね。『堀川〜』の音楽も結構ダブっぽかったですけど、そういう感じがお好きなんですか?

柴田 ここ最近はよく言われます。僕がダブを好きかどうかってよりも「ダブだなあ」って見た人から言われる。

宇波 最近ようやくジャマイカの音楽をいろいろ聞いてるんですけど、わりと詳しい友達にグレゴール・アイザックっていうシンガーの、キング・ダビーがミックスやったCDを貸してもらって。ボーカリストのソロアルバムなんです。でも聞いたら、インストなんですよ。チャカツク、チャカツク、たまにあー、あー、あーってディレイかかってるだけ。なにがあったかって、ダブだから、録音した後にボーカルのトラックが全部ミュートされちゃった(笑)。ボーカリスト名義のアルバムなんですよ。でも伴奏だけが延々入ってて。誤解かもしれませんが。

柴田 いいですね! 透明になってる感じ。

宇波 ディレイだけが聞えてくる。

柴田 その人の気配はする。

宇波 気配だけは(笑)。

柴田 素敵ですね。その人の名義で、その人が聞いた音像がアルバムになってる。でもそういうことですよ、シンガーであってもいいじゃないかと思う。

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宇波 ところでこのバンド活動は今後どうなってくんですか? 消えちゃいましたけど。

柴田 そうなんです、僕らは透明になったんで、より風景の音そのものになったんですね。で、最後僕らのバンドの車のくじら号が、2月をもって「お疲れさまでした!」と廃車になるんですね。

宇波 解散ギグをやったほうがいいんじゃ(笑)。

柴田 そうですね、ちゃんと追悼しないといけないんだよなあ……っていうのが『ギ・あいうえおス』のパート2。曲名は考えてないんですけど。

――「ずばぬけたかえうた」は曲名なんですよね。

宇波 曲名だったんだ。

柴田 僕らバンドが「ギ・あいうえおス」で、曲名が「ずばぬけたかえうた」。

宇波 PVなんだ(笑)。

柴田 PVというか、アルバムなんですけど。

宇波 でも長さが丁度CDって感じですよね。

柴田 そうなんです。だから音楽です。
 それで今後どうしようかな。「ずばぬけたかえうた」やって、わからなくなってしまったんで。

宇波 でもメンバーが風景になってしまったから、何もしなくていいかもしれないですね。

柴田 まーねー。でも構想はぼんやりとあるんですけどね。究極は、風景だけを撮ってくのを出来ないかって考えてるんです。風景だけでどこまで音楽になれるか。これは結構、退屈さとの勝負ですよ。退屈になられると嫌じゃないですか。音楽的に、音楽だっていうふうに、やっぱりこう楽しんでもらいたい。それはものすごい課題で、いま立ち止まってます。

宇波 風景しか出てこないバンド映画ってすごいですね。

柴田 そうでしょ! そうでしょう、そうなんですよ。だからいろんなことを考えちゃ捨て、考えちゃ捨てて。単純に鏡に一瞬だけ僕らが映るとか。もうせっかく透明になってんだから。それか白い粉ぶっかけられて輪郭だけ出てきたとかそういうバカっぽい映画のネタ使ったってアレだし。全部思っちゃ捨て、思っちゃ捨てを繰り返して。

宇波 対バンってどうですかね?

柴田 なるほど! そういう手があったのか!

宇波 そういうライブハウスのシステムみたいなの、外側だけ使うといいんじゃないですか?

柴田 それこそ宇波さんのバンドのHOSEがいて、僕ら透明だから、演奏を邪魔している。アンプが抜けちゃったりとか。

宇波 透明ですからね。

柴田 透明ですから……、それって対バンなのか? ライバルなのか……。

宇波 GISMのメンバーが殴り込むみたいな。

柴田 そういう感じ、いいですね。そういう存在の仕方、ありだな。最近もうずっとこのまま引き摺って透明のままなんで、なんかこう世界に対する対抗意識もなければ、ライバル心もなければ、何もない。こう、張り合いが……。

宇波 『インビジブル』(00 ポール・バーホーベン)?

柴田 そう! かと言ってエロいことしたいわけでもないし……。もうなんかね、まずいですよね。

宇波 透明になって池に石を投げてるってのもいいかもしれませんね。

柴田 いいですね。井の頭公園でも行くかな……、煙草吸ってんのが最高に好きですもん。

宇波 僕ね、大の嫌煙家なんですよ。

柴田 あら。そうですか。もう始まってますね、対バン。

宇波 そういえば僕のバンドでつくったロードムービーがあるんですよ。

柴田 そうなんですか、見たいですね。今度対バンしていいですか?

宇波 でも常に対バンなんでしょう、風景だから……。


【映芸シネマテークvol.12】

詳細:http://eigageijutsu.com/article/250179019.html
上映作品:『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』(10 監督:大工原正樹 脚本:井川耕一郎)
『西みがき』(06 監督:井川耕一郎)
『玄関の女』(11 監督:井川耕一郎)
3月9日(金) 開場:18時30分 開映:19時
20時50分〜:トーク 大工原正樹・井川耕一郎
会場:人形町三日月座B1F/Base KOM
入場料金:1500円
※予約は電話、メールにて承ります。問い合わせ先まで、お名前、連絡先(電話番号/メールアドレス)、枚数をお知らせください。予約にて定員(30名)となった場合、当日券はございません。

主催:映画芸術、coffee & pictures人形町三日月座
予約・問い合わせ:映画芸術編集部 電話:03-6909-2160
メール:eigei×y7.dion.ne.jp (×印に@を入れて送信してください)
posted by 映芸編集部 at 16:22 | レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする