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2008年02月01日

■試写室だより『人のセックスを笑うな』
137分のフィルムに貫かれた、しなやかで強靱な作家性

『犬猫』の井口奈己監督の新作。観る前は137分の長尺が気になったが、そんなことは関係ない充実作だった。

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(C)2008「人のセックスを笑うな」製作委員会


 マスコミ試写を見逃してしまい、一般試写で観たのだが、終映後に「かなり淡々とした映画だったね」との声も聞こえてきた。引きの画面で、かなりの長回しが多く、切り返しや寄りもほとんど使わないためだろうが、その企みは多くがうまくいっていた。このような画面作りに慣れていない観客はとまどったのかもしれない。ラストが幾分弱かったりと、細かいところで気になるところはあるが、2作目で原作ものを自分の世界に引き寄せて撮った井口監督の成果は素晴らしい。当然のことなのだが残念ながら今の日本映画では数が少ない、監督のやろうとしていることが画面に現れていて爽快だ。

 初期のバージョンは30分長く、167分と『地獄の黙示録』(153分)や最近では『グッド・シェパード』(167分)並みの上映分数だったようだ。両方観た方によると、「あまり違いを覚えていない(笑)」と冗談も入れて言っていたが、それだけ強固に作品世界が構築されている証でもあるだろう。いつか167分バージョンも観てみたいものだ。

 主演の永作博美と松山ケンイチも好演していて、後者は「今までで一番、素に近い」と言っているが、まさにそんな素の雰囲気を感じさせる。山崎ナオコーラの原作を井口監督と本調有香(『男たちのかいた絵』『blue』など)が脚色していて、原作よりも脇の二人である「えんちゃん」と「堂本」を膨らませている。そのことが井口監督色をより強めていて見応えがある。

 英語タイトルは「Don't laugh at my romance」と「オレのロマンスを笑うな」となっているが、主人公のみるめの視点でみると、この英語タイトルはよく分かる。

text by わたなべりんたろう

監督:井口奈己
原作:山崎ナオコーラ
脚本:本調有香 井口奈己
撮影:鈴木昭彦
音楽:HAKASE-SUN
出演:永作博美 松山ケンイチ 蒼井優 忍成修吾
制作/配給:東京テアトル
2007/カラー/ヴィスタ/137分/DTS STEREO

シネセゾン渋谷にて公開中、全国順次公開
公式ウェブサイト
http://www.hitoseku.com/


posted by 映芸編集部 at 00:00 | レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする