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2008年05月05日

シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション
西尾孔志インタビュー

 今年の映画監督協会新人賞を受賞した横浜聡子監督の『ジャーマン+雨』、香港映画祭のアジア・フィルム・アワードで「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督大賞を受賞した石井裕也監督の『ガール・スパークス』と、話題作を続々と世に送り出しているのがシネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション、通称CO2という映画祭です。5月17日〜23日までの1週間、CO2がこれまでに助成した作品やコンペの入選作が、池袋のシネマ・ロサでレイト上映されます。そこで今回は、たまたま編集部に遊びに来てくださったCO2の運営スタッフで、第1回のグランプリ受賞者でもある西尾孔志さんにアポなし取材を敢行、CO2という映画祭の特色について聞いてみました。

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――西尾さんはCO2のスタッフということになるんでしょうか。

元々は、1回目の映画祭で作家として助成を受けた立場だったんですが、今は運営スタッフの一員としてディレクター的な仕事をしています。映画祭が大きくならなければ自分の作品も広がっていかないですし、スタッフとしても参加してみようと思ったんですね。

――CO2はそもそも大阪市が予算を出している映画祭なんですか。

一応、大阪市の文化育成事業の一環としてやっています。詳しい立ち上げの経緯は知らないんですけど、大阪市から当初のスタッフに映画祭をやりたいという話があったみたいですね。ただ、4年前の時点で地方の映画祭というのは珍しくなかったので、作品を集めて上映するだけでは意味がない、それなら5本ぐらい映画を作ろうということになったらしいです。助成金は50万円と少ないですが、学校を出たばかりの若い作家にとってはそれなりの額ですし、世間に認知されるための手助けぐらいはできるだろうと。ただ3回目にして『ジャーマン+雨』のように全国的な広がりを見せる作品が出てくるというのは想定外だったと思います。

――横浜監督の場合は、どういう経緯で『ジャーマン+雨』を撮られたんですか。

この映画祭は、企画制作部門とコンペ部門という二つの枠がありまして、企画制作部門では企画書を募集して面白そうなものに助成金を出す、コンペ部門では既に出来あがった作品を募集して、その中から賞を選ぶという形を取っています。コンペ部門でグランプリを獲った監督も助成の対象になるんですけど、横浜さんの場合は前作の『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』がコンペでグランプリを獲って助成対象に選ばれて、『ジャーマン+雨』が助成作品内のコンペでもグランプリを獲ったという流れですね。

――助成作品の中で再度、コンペをやるわけですか。

助成対象者の5人は一応入賞という形になるんですが、作品が完成した後に今度は観客的な立場からグランプリを1本選んでいます。そうすることで競争意識も芽生えますし。

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西尾孔志監督『おちょんちゃんの愛と冒険と革命』

――例えば、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)の場合だと、入選者全員にスカラシップへの応募権利が与えられますが、CO2の企画制作部門では助成作品をどんな形で選んでるんですか。

全国から自分の代表作と言えるような作品を1本と企画書1本を募集します。それを徹底的に審査して5人を選出するという流れです。だからコンペで入選した人だけが助成対象になるというわけではないんです。『ガール・スパークス』の石井君や『放流人間』の岡君はコンペには応募せずに、企画制作部門への応募で助成対象に選ばれてますね。

――企画制作部門の審査は誰が担当しているんですか。

1次審査は僕を含めたスタッフと過去に助成を受けた監督たちで担当しています。そこで20本ぐらいに絞った後、第一線で活躍されている監督に最終審査をしてもらいます。4回目に当たる今年は沖島勲さんと高嶺剛さん、それから合田健二さんの3人にお願いしました。その審査で選ばれた4本と、コンペ部門でグランプリを獲った監督が助成対象になるわけです。

――助成作品を選ぶうえでCO2独自のポリシーみたいなものはあるんでしょうか。

こういうコンセプトで選ぶというマニュアルみたいなものはありません。ただ1回目〜3回目までに黒沢清さんや山下敦弘さん、いまおかしんじさんといった監督方に最終審査をお願いしてきて、みなさん荒削りだけど次回作を観てみたいと思わせるような人を選んでるんですよ。だから毎年、作品の完成度よりも作家の勢いや将来性を感じさせるような映画が作られているんだと思います。

――助成が決まった後、CO2側が内容に口を出すことはないんですか。

去年、横浜さんたちが助成対象だった時は脚本を読んで感想を伝えたりはしてたんですけど、内容についてはほとんどノータッチでした。こちらはスタッフ、機材、ロケ地などに関するサポートをするだけで、プロデューサー的な関わり方はしていなかったんです。でも今年は脚本にも口を出してみたりして、どういうやり方がベストなのか模索しています。まだ新しい映画祭なので、こちらも試行錯誤しながらやってる感じなんですよ。

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横浜聡子監督『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』

――『ジャーマン+雨』などの前例もありますし、今年の助成作品の中から劇場公開されるものが出てくる可能性もあるんじゃないですか。

そういう期待はしてるんですけど、CO2 側もそこまではサポートできないので、あとは監督個人のがんばり次第ですね。正直、予算のない映画祭なので(笑)、興行までは手がまわらないのが現状なんです。こちらもなんとか人目につくようにはしたいと思ってるんですけど。

――でもCO2は地方の映画祭としては存在感を示しているほうじゃないですか?

去年は5本の助成作品のうち『ジャーマン+雨』『ガール・スパークス』『放流人間』の3本が劇場公開されたので、少しは目立っていたかもしれませんね。

――今後、自主映画監督の登竜門的な存在になる可能性もあるんじゃないですか。

僕は今33なんですけど、僕らの世代ではそういう存在がPFFしかありませんでした。助成金はPFFとケタが違いますけど(笑)、この映画祭も若い作家が世に出て行くきっかけぐらいは作れるんじゃないかなと思っています。しかも助成対象者が5人と間口も広いですからね。

――大阪と言えば知事が変わって予算のことが問題になってますけど(笑)、その辺は大丈夫なんでしょうか。

一応、来年は開催できそうなんですけど、その先のことはわからないですね。

――大阪発の映画祭というところで意識していることはあるんですか。例えば、助成作品は大阪でロケしなければいけないとか。

大阪市からは、できればそうしてほしいと言われてるんですが、強制ではありません。大阪以外のところに住んでいる監督にとっては滞在費だけで結構な出費になりますし。

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石井裕也監督『反逆次郎の恋』

――西尾さん自身は大阪に住みながら映画を作り続けてるわけですよね。大阪で撮ることへのこだわりみたいなものがあるんでしょうか。

大阪には映像関係の仕事がないので、本当は東京へ来たいんですけどね…(笑)。東京へ来て羨ましいと思うのは、小さなカフェなんかでも自主映画の上映をやってたりするじゃないですか。大阪にはそういう場所がないんですよ。演劇や音楽の分野だと自力で小屋を作ったりライブハウスを作ったりしてる人もいるんですけど、映画でそういう活動をしてるのは僕より上の世代にしかいないんです。

――東京では大阪芸大ブームのようなものが起きてますが、大阪でもそういう盛り上がりはあるんですか。

どうなんですかねぇ。大阪芸大の卒業製作展でしか上映されなかったような作品が東京のミニシアターで上映されて、お客さんが結構入ったなんて話を聞くと驚きますけど。やっぱり大阪は単純にお客さんが入らないんですよ。映画を観る人口が東京は圧倒的に多いんでしょうね。

――最後にCO2の東京上映を前に全体の見所を教えてもらえますか。

映画祭の審査を担当したりすると、今は技術的にも内容的にもソツのない作品が多いんですよ。でもCO2には、そういうところに収まらないぞ、という気合のある作家さんたちが集っている。それがこの映画祭の魅力だと思います。きっと1本は自分の好きな映画を見つけられると思うので、是非多くの方に来てもらいたいですね。

(取材・構成:平澤 竹識)


〈上映作品〉
5月17日
 『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』監督:横浜聡子(『ジャーマン+雨』)
 『さよなら、ジョージ・アダムスキー』監督:児玉和土(『ほんとうにあった怖い話』)
 トークショー:横浜聡子×児玉和土 
5月18日
 『僕達は死んでしまった』監督:三浦崇志・大力拓哉
 『ネコハコベフジワラさん』監督:川原康臣
 トークショー:三浦崇志×大力拓哉×川原康臣 
5月19日
 『おちょんちゃんの愛と冒険と革命』監督:西尾孔志
 『マターナル・ブルースカイ』監督:羽野暢
 『borisico』監督:板倉善之(『青空ポンチ』出演)
 『グレートブリテン』監督:石井裕也(『剥き出しにっぽん』)
 トークショー:西尾孔志×石井裕也×羽野暢×板倉善之
5月20日
 『反逆次郎の恋』監督:石井裕也(『剥き出しにっぽん』)
 トークショー:石井裕也
5月21日
 『最後の怪獣』監督:高橋明大
 『お城が見える』監督:小出豊
 トークショー:高橋明大×小出豊×宮沢章夫(劇作家)
5月22日
 『bluebird』監督:浅川周
 トークショー:浅川周
5月23日
 『都会の夢』監督:木駿一
 トークショー:木駿一×重実百合(主演)

5月17日(土)〜 5月23日(金)池袋シネマ・ロサにて連日21時〜
CO2公式サイト:http://www.co2ex.org/



posted by 映芸編集部 at 18:02 | インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする