試写室だより『ひゃくはち』
青春は美しくない。でも……
加瀬修一(ライター)

 プロ野球は負けても次の試合があり、次のシーズンがある。だが、高校野球に次はない。その一回性ゆえにマスコミもドラマを盛り上げるし、世間一般でも夏の風物詩として広く認知されている。高校球児の溌剌とした姿に胸躍らされ、自身のもう戻らない時を懐かしむ。誰しも過去には甘く、現在には厳しいものだ。だからこそ、高校野球は青春の象徴となり、甲子園はその聖地となった。
 今回が劇場映画の初監督となる森義隆は自らが高校球児だった経験から、この高校野球に対する反応に強い違和感を持っていたようだ。タイトルの108【ひゃくはち】とは、硬式野球ボールの縫い目の数で人間の煩悩の数と一緒。高校球児は決して清々しいばかりじゃない、脚光を浴びるのはほんの一握りの選手だけで、補欠になんて誰も眼を向けることはない。だが、その無数に存在している補欠にとっても高校野球は青春なんだと、そんな思いをデビュー作に込めたのではないだろうか。

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(C)2008「ひゃくはち」製作委員会

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posted by 映芸編集部 at 2008/08/03 06:53 | レポート

映画芸術最新号発売!!

こんにちは、はじめまして、本誌スタッフです。
今回リニューアルという名目で、かなり好き勝手に編集をさせていただきました。
映画は本当に懐の深い、恐ろしいものだと痛感しています。
気持ちばかりが先行し、至らない部分は多々あると思います。
それでも心優しい人々や、素晴らしいものを作る物凄い人々に多々出会えました。
その素晴らしさを、少しでもより強く、皆さんにお届けできていれば幸いです。
どうぞ手にとってご覧になってください。
2008.7.30 本誌編集長 大嶋絢子


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posted by 映芸編集部 at 2008/07/30 23:50 | レポート

試写室だより『アメリカばんざい crazy as usual』
思想に自由あれ、しかしまた観客にも自由あれ
若木康輔(ライター)

 最近は、見終わった後にどんな感想を言ってほしいのか、ちらしやポスターを眺めればもうイヤでも分かる、不自由な印象のものが「ドキュメンタリー映画」として劇場公開されることが増えた。『アメリカばんざい crazy as usual』も、そういう傾向の一本と言っていい。
 しかも、実際の仕上がりについても僕は大いに不満なのである。それだけの作品なら、とてもこのレビューを書く気にはなれなかった。
 しかし、本作のなかで聞けるイラク帰還兵や家族の話には感じるところが多かった。多くの人に届かなければ勿体ない、と思った。その一点のために、本サイトの更新スケジュールの間に割り込ませてもらうよう、担当の平澤青年に頼んだのだ。
 その後すぐに、後悔することになった。もともと仕上がりに大不満な映画だから、紹介したくなったくせにどうすればよいか分からない。「ドキュメンタリー映画」には往々にして、こういう厄介な矛盾が待ち構えている。

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posted by 映芸編集部 at 2008/07/25 06:40 | レポート

試写室だより『きみの友だち』
センチメンタルの在り処
深田晃司(映画監督)

 住宅街のありふれた公園に、白い紐が揺れている。それは大縄飛びの紐で、両端には小学生の女の子ふたり。一人は片足不随で松葉杖、もう一方は病弱そうに見える。つまり、彼女らは半ば強制的に「飛ぶ人」ではなく「回す人」にクラス会議で割り振られ、放課後に練習をしているのだ。成り行きでコンビを組むことになった二人の息はなかなか合わず縄はデタラメに波打つが、次第にそのゆらぎは正しく揃い、きれいな楕円を描きだす。
 映画『きみの友だち』で胸を打つのは、そんな些細な瞬間である。子役たちの、理路整然とおよそ子供らしくもない「正確」なリズムで発せられる台詞(だいたい、大人だってそんな論理的に的確に喋れるものではないのに)よりも、スクリーンにゆらぎを刻む縄飛びの運動こそが女の子たちの諍いと融和の歴史を雄弁に物語る。

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(C)「きみの友だち」製作委員会

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posted by 映芸編集部 at 2008/07/20 22:16 | レポート

試写室だより 『片腕マシンガール』&<Neo Actionシリーズ>
もうすぐ夏休み!ガールズ・アクション レビューまつり‘08
若木康輔 (ライター)

 雑誌「映画芸術」には、日本映画のエログロやバイオレンスの存在意義を積極的に擁護してきた歴史がある。僕よりよくご存じの方も多いだろう。オルタネイティヴな表現や作家を色メガネ抜きで評価する姿勢は今も自然と受け継がれているから、大量の血しぶきが出る、首や腕が飛ぶなどの残酷描写が出てくるといった理由だけで『片腕マシンガール』を黙殺したり、あるいは無暗にはしゃいで持ち上げたりすることはない。僕自身、そういう伝統に敬意を持っている。
 そのうえで言う。『片腕マシンガール』を試写で見て、僕は残酷描写が大いに気になった。青少年の教育によくないのでは、とすら思った。

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『片腕マシンガール』(C)2008 FEVER DREAMS,LLC

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posted by 映芸編集部 at 2008/07/12 23:47 | レポート

■試写室だより『半身反義』
映画を介して求め合うふたり
CHINGO!(映画狂)

 老いた映画人とは妙に魅力的な被写体で、かつて独特のプロフェッショナルとして時代の先端にいた彼らは、いまや老ライオンのような風格で遠くを見やっている――みたいな印象がある。そのようなひとびとと出会った場合、僕としては複雑な心境になる。世が世ならこちとら一介のチンピラとこのひとたちが交流するようなことはなかったんではないか、この知り合ってしまう状況自体が映画の凋落を表しているのではないか、などと。とはいえ、優秀な人間たちが上げ潮の映画界・映像業界のなかで鍛えられていったような話を聞くのはすごく面白くてありがたいのだが。

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posted by 映芸編集部 at 2008/06/19 16:24 | レポート

■試写室だより『イースタン・プロミス』
肌に刻まれた歴史と、肌を刻まれる恐怖の間に

カインの印
 旧約聖書の『創世記』によると、神はこの世で最初の殺人者となったカインを追放する前に、彼の身体に印を刻みつけたという。このカインの印(The Mark of Cain)をつけて歩く者は、永久に犯罪者と社会的な落伍者のレッテルを背負って生きなくてはならなくなった。

 女性ドキュメンタリー作家のアリックス・ランバート(Alix Lambert)の、その名も『カインの印』(The Mark of Cain)という記録映画は、ロシアの刑務所におけるボディアートの現在とその歴史をあつかっている。
 ロシアのサマラにある拘置所では、胸から腹にかけて聖母マリアのタトゥーをしている男から「その人間のことがタトゥーからよくわかるんだ、タトゥーの出来のよさでね。たとえば、俺が中央刑務所の独房に入っていたことなんかがさ」という発言を引きだしている。また、他の刑務所の老年の受刑者は「昔は誰が1927年や1928年の受刑者か、ひと目でわかったものさ。当局は誰にでもやたらとイーグルのタトゥーを入れてたんだ。その後はすぐにレーニンとスターリンになったけどな」と証言する。

 受刑者たちは、タトゥーを通してコミュニケーションを取っていた。体に刻まれたタトゥーを見れば、犯した罪や服役期間、性的な嗜好など、さまざまなことがわかるのだ。いわば身体に刻みこまれた履歴書のようなものである。
 ボディアートは単純な装飾以上のものであり、その模様はその囚人のバックグラウンドと、刑務所や収容所という複雑な社会システムにおけるランクをはっきりと示すのである。たとえば、蜘蛛や蜘蛛の巣の図柄は薬物中毒を意味し、軍の印と肩飾りのタトゥーは犯罪の成果、髑髏は殺人犯を意味する。背中の3つの教会のドームは刑務所に3回入ったという意味で、指のサンクト・ペテルブルグの十字架はその刑務所に入ったことを示し、額の有刺鉄線は、仮釈放される可能性のない終身刑を表す、といった具合である。

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(c)2007 Focus Features LLC, All Rights Reserved.

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posted by 映芸編集部 at 2008/06/13 15:59 | レポート

映芸マンスリーVOL13『ガール・スパークス』トーク
石井裕也(監督)

 大阪芸大の卒業制作として監督した『剥き出しにっぽん』(05)がぴあフィルムフェスティバルのPFFアワード2007でグランプリを受賞、さらに今年の香港映画祭で開催されたアジア・フィルム・アワードでは「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督大賞を手にした石井裕也監督。映芸マンスリーVOL13では、破竹の勢いでいよいよ商業映画界に進出する注目の若手作家を迎え、長編3作目にあたる『ガール・スパークス』(07)を上映しました。上映後のトークショーでは石井監督が名言(?)を連発。確固たる意志と哲学を持ちながら、決して気取らない話しぶりは、その作品群にも通底しているのではないでしょうか。

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左から、わたなべりんたろう(ライター)、石井裕也(監督)

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posted by 映芸編集部 at 2008/06/08 18:08 | レポート

■映画館だより『おいしいコーヒーの真実』
心にもおいしいコーヒーが飲みたい。

カフェブームと言われて久しい。個性的な癒しの空間や新しいライフスタイルが提案され続け、コーヒーは最も身近な飲み物となった。しかし1杯のコーヒーがどういう成り立ちで目の前にあるのかを知る人は少ないのではないだろうか。

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posted by 映芸編集部 at 2008/05/31 00:33 | レポート

映芸マンスリーVOL12.『一万年、後....。』トーク
沖島勲(監督)×芦澤明子(撮影)×山川宗則(プロデューサー)

 脚本家として、また助監督として往年の若松プロダクションを支えた後、テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」のメインライターを務め、約1400本の脚本を担当したという経歴を持つ沖島勲監督。『ニュー・ジャック・アンド・ヴェティ』(69)、『出張』(89)、『したくて、したくて、たまらない、女。』(96)、『YYK論争 永遠の“誤解”』(99)という作品群はいずれも日本の映画史において異彩を放っています。
 4月14日に行われた映芸マンスリーVOL12.では昨年公開された沖島監督の最新作『一万年、後....。』を上映し、監督と撮影の芦澤明子さん、プロデューサーの山川宗則さんを迎えてトークショーを行いました。電波の乱れで一万年後の世界にタイムスリップした男と、一万年後の世界に暮らす兄妹との交流をワンシチュエーションで描く『一万年、後....。』。この一風変わったSF映画はどのように発想されて具現化されていったのでしょうか。異才の頭脳に迫ってみました。

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左から芦澤明子(撮影)、沖島勲(監督)、山川宗則(プロデューサー)

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posted by 映芸編集部 at 2008/05/26 00:00 | レポート